坂部 正英 Masahide Sakabe, PhD.
(Cincinnati Children's Hospital Medical Center)
【オハイオ州】 審査員氏名: 行川賢 先生(Associate Professor, Cincinnati Children’s Hospital Medical Center) 佐々木敦朗 先生(Associate Professor, University of Cincinnati College of Medicine; Project Professor, Keio University)
受賞者紹介
【オハイオ、受賞論文2.】 受賞者氏名:坂部 正英 研究分野:Cardiovascular Development 留学期間:3-5 years 論文リンク https://www.pnas.org/content/114/41/10918
審査員コメント
血管内皮細胞の遊走を制御する機構としてHippo pathway の下流の因子であるYAP/TAZの機能を同定した重要な報告です。今後の坂部さんのキャリア発展のための重要な礎になると期待しています。(行川先生) YAP/TAZは、核内においての役割が知られている。ここに、細胞質での新規の活性を見出した、留学3年以上かけたエポックメイキングな論文である。Cdc42活性化メカニズムや、細胞質でのYAP/TAZ経路の別のエフェクターなど、今後の更なる展開、そして第一人者として分野をリードしていくことが期待される。(佐々木先生)
論文内容
血管系の発達は組織の分化や形態形成を促し、また、組織が必要とする栄養や酸素の供給を可能とさせる。近年、様々な疾患において血管新生が重要な役割を担っていることが明らかとなってきており、これをターゲットとした治療戦略の開発が期待されている。生体における血管新生は促進と抑制を促すシグナル伝達によって制御され、これらのバランスの乱れが悪性腫瘍などに認められる異常な血管新生を引き起こすと考えられている。血管形成の制御に必須の因子としてVEGFなどが同定されているが、促進・抑制シグナルの絶妙なバランスを制御する分子機構は不明な点が多い。近年、我々は血管形成を制御するシグナルとしてHippo pathwayが関与していることを見出した。Hippo pathwayは細胞の増殖を制御するシグナル伝達経路として知られており、下流エフェクターのYAP/TAZが核内に移行することにより、細胞増殖に関与する遺伝子群の発現を亢進させる。しかし、血管内皮細胞の遊走においては、核内に移行したYAP/TAZは細胞遊走を阻害し、逆に細胞質内に局在するYAP/TAZが低分子量Gタンパク質であるCDC42を活性化し、細胞遊走を亢進させることが認められた。今回の知見により、血管内皮細胞においてYAP/TAZは核内だけではなく、細胞質内でも機能を有することが明らかとなった。
受賞者コメント
血管系の発達は組織の分化や形態形成を促し、また、組織が必要とする栄養や酸素の供給を可能とさせる。近年、様々な疾患において血管新生が重要な役割を担っていることが明らかとなってきており、これをターゲットとした治療戦略の開発が期待されている。生体における血管新生は促進と抑制を促すシグナル伝達によって制御され、これらのバランスの乱れが悪性腫瘍などに認められる異常な血管新生を引き起こすと考えられている。血管形成の制御に必須の因子としてVEGFなどが同定されているが、促進・抑制シグナルの絶妙なバランスを制御する分子機構は不明な点が多い。近年、我々は血管形成を制御するシグナルとしてHippo pathwayが関与していることを見出した。Hippo pathwayは細胞の増殖を制御するシグナル伝達経路として知られており、下流エフェクターのYAP/TAZが核内に移行することにより、細胞増殖に関与する遺伝子群の発現を亢進させる。しかし、血管内皮細胞の遊走においては、核内に移行したYAP/TAZは細胞遊走を阻害し、逆に細胞質内に局在するYAP/TAZが低分子量Gタンパク質であるCDC42を活性化し、細胞遊走を亢進させることが認められた。今回の知見により、血管内皮細胞においてYAP/TAZは核内だけではなく、細胞質内でも機能を有することが明らかとなった。