留学のその先は?
執筆者:
服部 峰充(東北大学工学研究科 特任助教)
留学先:
The University of Chicago
私は留学先から日本に帰国したばかりで、留学経験がその後どう生かされているかの判断はまさにこれからなのですが、ここでは研究留学に興味を持っている方々が気になるであろう「留学のその先は?」ということについて私の経験を記述したいと思います。 留学前からその先のキャリアパスを考える 私は博士号取得後すぐに、アメリカのシカゴ大学に留学しました。アカデミアの道に進むことを希望し、研究留学を熱望していた私にとって、留学先がすぐに決まったのはまさに幸運でした。留学に際して私は、先生方や先輩方からその先のキャリアパスをしっかり考えるようにとのアドバイスを受けました。一般的に「ポスドクは長くて3年まで」ということが言われており、その中でいかに結果を出して次の職を決めるかが、留学で成功を収める鍵だと教わりました。いざ研究を始めると、ポスドク1年目は、生活に不慣れながらも異国の文化に大きく刺激を受け、また仕事においても世界トップクラスの研究環境に感銘をうけながら研究に励む日々でした。2年目には生活にも慣れ、英語での意思疎通も苦労が少なくなってきます。このまま仕事をまとめて次の職探しへ……とは残念ながらならず、「成果がなかなか出ない」という何とも悩ましい問題が生じました。2年目に結果を論文としてまとめ3年目には就職活動、ということがいかに難しいかということを痛感した時期でした。 臨機応変に 前述のようになかなか成果が出なかった私は、ポスドク3年の一般説に縛られず、まずは留学中にしっかり結果を残すことを目標にしました。海外留学中の成果がその後の研究活動に大きく影響するのではないかと考えたからです。苦労はしましたが、少しずつ結果が出始め、3年目の半ばにようやく仕事を論文としてまとめることに成功しました。その後、論文が出たことにより私のプロジェクトは大きく進展し、私は慌てて職を探すのではなくプロジェクトをさらに発展させる中で、業績を伸ばし、アメリカでの人脈を広げていこうと考えるようになりました。ですので、自らポスドク期間を延長することをPIにお願いし、結果として5年間ポスドクを続けることとなりました。この間に学会での発表機会やコラボレ-ターも増え、人脈を広げると共に様々な経験を積むことができました。このときの判断が正しかったかどうかは、今後の努力次第で評価されると思っています。 そして職探し 私は自らポスドク期間を延長する選択を選びましたが、年齢とキャリアパスを考慮すると次のステップに進む必要があると判断し、4年目の終わり頃から次の職を探し始めました。アカデミアに進む場合、海外でシニアポスドク(リサーチアソシエイト)やPIの職を探す、日本で研究者の職を探す、など様々な選択肢がありますが、私はアメリカでの経験と人脈を生かして日本で研究生活を続けようと考えていたため、日本での職探しを始めました。しかし、海外でポスドクをしているからといって職を見つけやすいということは無く、職探しは難航しました。運とタイミングに大きく左右されると思いますが、私は紆余曲折を経て、旧知の先生の紹介で次の職を得ることができました。 最後に 海外でポスドクをされていた方々の中には、私と同様に知り合いの先生の紹介で次の職を得た方や、公募に出し続け、面識のない先生のところで職を得た方もいました。ここでポイントとなっていたのは、「研究分野をどこまで広げて応募するか」であったと思います。年齢やそれまでの実績もあるため、全く新しい研究分野に飛び込むことは難しくなってきます。一方で、自身が行ってきた研究分野と完全に合致する職も少なく(独立PIとなれば話は別ですが)、将来どのような研究をしていきたいかというビジョンを持つことがその後のキャリアパスを考える上で重要ではないかと思いました。また、研究者にとって人脈は大切であり、研究留学する・しないに関わらず、積極的に人脈のネットワークを広げるべきだとも思いました。以上、私の経験が読者の方にとって少しでも役に立てることができれば幸いです。
編集者より
執筆者紹介:
編集後記:
確かに留学したからと言って,留学先で必ず良い研究ができるとは限りません.いつ結果が出るかもわかりません.でも,服部さんのように沢山の人達と繋がることによって,道が開けてくるのではないかと思います.新しい視点や,より大きな視点は色々な人たちとのディスカッションの中で生まれますが,そのようなディスカッションは本当に楽しくワクワクします
編集者:
本間 耕平