10年後を見据えて
執筆者:
赤木 紀之(金沢大学 医薬保健研究域医学系 再生分子医学)
留学先:
シーダスサイナイ医療センター、UCLA医学部(アメリカ)
目指すものを明確にする 10年先の自分をイメージして下さい。具体的には、自分が尊敬できる10歳ほど年上の先輩研究者が、今何をしているか注視して下さい。10年後、自分が似たようなポジションに立ち、その仕事を遂行できるか、その人と同等の能力を備えられているかを、今自問してみて下さい。 この発想は、身近にそういった尊敬でき目標となる先輩研究者がいることが前提となります。そういった対象がすぐ思い浮かぶあなたは、それだけで幸せな境遇にあると言って良いでしょう。思い浮かばないあなたは、まず自分の目標となる人物を探し出すことを始めてみてはどうでしょうか。 恐らくその人は、研究推進能力、論文執筆能力、若手への指導能力などに長けているでしょう。研究以外の大学運営業務等にも真摯に向き合っていることでしょう。上司(教授)からも部下(学生)からも絶対の信頼を得ているでしょう。 今すべきこと どうすればそういった能力を身につけ、研究と教育を両立できるようになれるのでしょうか? そのためには、今何をすべきなのでしょうか? それは「自分磨き」の一言に尽きると思います。 立場が上の人は、立場が下の人をよく観察し、その人に合った指導します。一方で、下の人もまた、上の人をよく観察し、その能力を見極めています。立場に関係なく、人の能力とは思った以上に見え見えです。あなたは今後、下の人からも能力を評価される立場になるのです。 ラボの規模に関わらず、「研究推進」や「研究室運営」に当たり、問題に直面することは日常茶飯事です。「問題」とは、単に自分の研究が行き詰まった時だけではありません。研究費や人間関係などラボを取り巻く全ての問題です。問題に直面した時こそ、格好の自分の磨きのチャンスです。問題を丸投げするのではなく、自分なりの解決策を見出してみて下さい。その上で、是非今のボスや指導者に相談を持ちかけてみて下さい。その相談を通して、上の人から多くを学び自分磨きに役立つはずです。 また、今のうちから若いポスドクや大学院生、学部学生の研究の相談に積極的に乗って下さい。人に教える事ほど、自分の学びにつながるものはありません。自分が将来、指導的な立場になることを常に意識して今を過ごして下さい。 助教になることを目指していないか? ポジションの獲得は、一定の業績と能力が備わっていれば、あとはタイミングに依存することが多い印象があります。似たような能力を持っていても、タイミングによっては助教になれたりなれなかったりします。多くの留学希望者、あるいは留学中のポスドクは、数年後に帰国し、日本国内で助教クラスのポジションを得たいと考えているのではないでしょうか? その希望自体は良いと思いますが、助教になることが最終目的となってしまっていないでしょうか? 自分の得たポジションに一喜一憂するのではなく、常にその先にある自分の姿を思い描いて、日々研さんに励んだら良いと思います。
編集者より
執筆者紹介:
編集後記:
ゴールを設定しなければ、進むことも、達成することもできない。わかってはいるけれど、先の目標よりも、今日の実験のことを考えてしまいがちです。そして私達が出くわしてしまう問題を、自分を磨く機会と捉えること。“意識“することで、自分の今日、そして明日への一歩が変わってくるのだと伝わってきました。いろいろな視点での、胸に響くアドバイス、有難うございます!
編集者:
Atsuo Sasaki